問題
あるアメリカ資本のグローバル企業の本社経理部で働くアメリカ人ミシェルは、新しい経理システムの立ち上げにユーザー代表として参加していた。
彼女は経理部の経験は豊富だが、ITシステム構築の知識や経験は無かった。新しい経理システムの立ち上げのためのITメンバーはインド支社におり、インド人ラジュがプロジェクトマネージャーを務めていた。
ミシェルはユーザー代表として、ラジュに自分の意見を沢山出した。現在の経理システムの問題点も熟知しており、新しいシステムが問題解決をしてくれることに期待していたからだった。
自分が経理部側のプロジェクトオーナーと考え、ラジュのことを共にプロジェクトを進めていくチームメンバーと考えていた。
そのため、ラジュの仕事の各フェーズに締切日をリクエストし、現状をレポートしてくれるよう伝えていた。
一方でラジュは、管理職でもないミシェルから大量に意見がとどき、締切日まで指定されることに戸惑っていた。
ラジュのIT部門の上司からこのプロジェクトに関する指示が来ており、そちらに従うものだと考えていたからである。
そのうちミシェルは、希望を伝えていた最初の開発フェーズの締切日を過ぎてもラジュから現状レポートが全く来ないことにイライラし始めた。
何度も催促をした後にやっと求めていたものがラジュから届いたが、それを見て唖然とした。彼女が詳細に伝えていた多くの意見が反映されていなかったからだった。彼女は反映されていないものを箇条書きにして、早急に修正してほしいとラジュに伝えた。
ラジュは職務レベルが同等であるミシェルから度重なる催促や、システム開発の意見を受けることに気分を害していた。
ラジュの上司は、ラジュが複数のプロジェクトを抱えており、優先順位を付けて仕事を行っていることを理解していたため、そのうちラジュはミシェルの連絡を無視するようになった。
ラジュからの返答が全く来なくなったミシェルは焦った。彼女はプロジェクトのオーナーとしての責任があり、新しい経理システムを心待ちにしている同僚もいた。
このプロジェクトの成功が彼女の評価を左右することも分かっていた。
直接顔を合わせてラジュに何が起きているのか聞きたかったが、アメリカとインドの距離があり、出張費用も出ないので叶わない。ミシェルは途方に暮れていた。