問題
あるグローバルE-コマース事業会社の日本支社にて経理部部長を務めるケン(長期志向)は、アメリカ人上司のジャーミー(短期志向)と共に来期予算を立てていた。
バックオフィスである経理部は、「請求書を支払うのに掛かる平均コストを、今期より何パーセント下げる」という細かい目標設定が必要だった。
ジャーミーは、日本の取引先の対応をサポートする日本人従業員を減らして、雇用コストの低い中国にサポート部署を作成しようと提案をした。
計算するとそれにより現状よりも雇用コストはかなり下がる見込みだった。日本語を話す人材も多く、オフィスの賃料も下がるメリットもあった。
一方でケンは、ジャーミーの提案に懐疑的だった。
新規の部署立ち上げは一時的に現在のスタッフに負荷がかかるし、日本の取引先の性質から考えると、外国人スタッフが対応をすることでコミュニケーションがスムーズで無くなることがあれば、取引先からの満足度が下がり、後々会社に大きな影響が出そうだと思った。
それに現在の雇用コストは中国の方が安いが5年後10年後を考えたときに日本との有意な差がなくなる可能性も高いとも感じた。
ケンは率直にジャーミーに意見を伝えると、ジャーミーはたちまち不機嫌になった。
ジャーミーはケンに「そんなに先の可能性まで心配をしたら、何も新しいことに踏み切れなくなるよ。どうしても来期に今期よりも経費を15%削減したいし、そのために中国のサポート部署は必要なことだと思う。」と言った。
それでもケンは、「中国での新規部署が立ち上がり、スムーズに回りだすまでには相当な時間が掛かるだろうし、短期で机上の計算通りに経費が削減されるかどうかは分からない」と反発したので、ジャーミーは「君と今この話をしても結論は出ないようだね」と言い退室してしまった。