問題
ゆり子は、あるグローバルコンサルティング会社のイギリス本社でキャリアを積んだ後、中国支社のセールスチームに異動をした。
中国支社がクライアント数を劇的に伸ばす中で、日系企業にもコンサルティングサービス展開をすることになり初期メンバーとして参画することを選んだためだ。
中国に進出をする日系企業にセールス活動を進める中で、とある現地法人の社長を務める田中氏と知り合った。
田中氏がゆり子の会社のサービス内容に興味を持ったため、ゆり子はセールスプレゼンテーションを重ねた。ゆり子は自身が勤める会社の強みをはっきりと理解していた。
中国に進出する多数の外資系企業に向けての会計や法律のコンサルティングサービスに実績と定評があり、変化の激しい中国ビジネスにスピード感を持って適応していくノウハウがあった。
多数のクライアントもまた中国マーケットで急成長を遂げていた。
日系企業へのサービス提供は未経験だったが、同じ外資系という立場から中国マーケットで日系企業の迅速な成長をサポートすることが出来ると確信をしていた。
一方で田中氏は、ゆり子のプレゼンテーションを聞いて一抹の不安を感じた。
まず、ゆり子の会社が日系企業へのサービス提供の実績がないことが心許なく感じた。
日本人スタッフの数も少なく、いざというときの日本語サポートがどれだけ受けられるか分からなかった。
それに、多くのヨーロッパの外資系企業が中国マーケットで急成長を遂げていることに対しても、それが日本企業に必ず当てはまると言い切れるのか、表出していないリスクはないだろうかと懐疑的だった。
何度かセールスの機会をもらったが、最終的にゆり子は田中氏の会社との契約獲得に至らなかった。田中氏は日系のコンサルティング会社と契約をしたのだった。
ゆり子は、自分には営業力が足りないのだと感じ落ち込んだ。